主要政党に関して
正式名称は民主進歩党。1986年結党(戒厳令解除前)。1989年から合法化された。イメージカラーは綠。基本的に台湾の独自性をアイデンティティとしている。結成当初は反国民党勢力として多様な派閥が葛藤を繰り返してきたが、少しずつ一つの方針へと集約、陳水扁時代のスキャンダルなどもあったが、その後、地方都市でも支持層を増やし、2010年、2014年の地方選挙では台湾主要都市で大躍進した。党の代表である主席は蔡英文(2016年総統選で総統に当選)。今回の選挙では「我ら、台湾人」をスローガンとしており、立法院では総数113議席のうち68議席を獲得。5月20日の中華民国総統交代にむかい、中国を刺激しない範囲で、アメリカなどの主要国との会談を重ね、4月には基本的な施政方針を発表している(経済政策、福祉政策が中心)。ちなみに、日本保守政府は伝統的に国民党政権と深い関係があり(当初は元大日本帝国軍人グループが,その後は利権派保守政治家が)、積極的な交流は行われていないようだ(少なくとも台湾での公的な情報では)。ただ新政権では日本への期待が高まっており、熊本・大分震災でも民進党系市長は多くの寄付をするなど、政治のみならず市民レベルでの親善を深めようとしている。
今回の総統選挙でのメディア戦略では、蔡候補のキャラクター商品で親しみやすさを演出、他方、テレビCMなどでは高雄市長で、戒厳令解除の契機となった全島的な民主化運動、美麗島事件で懲役12年の判決を受け、6年後に釈放、李登輝総統政権下で判決自体が無効にされた陳菊氏とともに蔡候補が並んで登場、確固たる意志力をアピールしていた。このCMは実に印象的だ。
2015年1月25日結成。2014年4月のひまわり学生運動から生まれた。党首は今回の立法院選で生まれ故郷、新北市第12選挙区から立候補し、当選した黄國昌(国立台北大学兼任教授)氏。彼は大学時代から民主化・人権運動に関わり、ひまわり学生運動では理論的な指導者の一人となった。今回の立法院選では5人当選。政策秘書にひまわり学生運動出身の青年たちを起用している。民進党よりも社会的改革を鮮明に主張しており、民進党に対しては友好関係を保ちながらも、なれ合うことなく「観察」、「主張」することを明確にしている。2016年4月には主要都市に党地方拠点を設立、地方選にも進出することを明確にしている。
結党当初は今回、台北市第五選挙区(萬華区、中正区)で立法院に当選した林昶佐氏が発起人代表だった。林昶佐氏はFreddy Limという名前の方が知られている(台湾アイデンティティに根ざしたメッセージ性の強いへビメタバンド「ソニック」での活動、端正な二胡奏法と歌でのライブなどがユーチューブで見ることができる)。
さらに台中市第三選挙区で当選した洪慈庸氏は弟が自殺に追い込まれた洪仲丘事件(陸軍下士官が軍紀違反で懲罰として徹底した虐めを受け、不審死した事件)の真相究明から政治に関わるようになり、時代力量の結党に参加した。
このように若い力を戦略性と独自性で組織化し、巨大なうねりになる可能性を秘めている新党である。
2001年、国民党内台湾人系の非主流派が分裂し、結成した政党。元総統である李登輝氏を理論的な指導者としている。当初は中間派として一定の勢力を保ったが、国民党、民進党との間で明確な主張を明確にできず、勢力は衰退。前回は比例区で獲得していた3議席を、2016年選挙では議席を失った。衰退傾向は続きそうだ。
正式名称は中国国民党。詳しいことは省くが、2016年1月の総統選では大陸との統一を重視する洪秀柱氏があまりに不人気だったため、新世代のエリートの朱立倫氏(新北市市長)が急遽、立候補することになったが、結果は惨敗。立法院議席も35議席まで激減させた。そのため朱氏は党首を辞任。3月に党首選が行われたが、現実派候補を、洪秀柱氏が破り、党首に当選した。その主張は変わっておらず、内部での対立は続きそうだ。ただ、地方組織レベルでは国民党支持者は根強くおり、この後、勢力回復の可能性もある。
元台湾省長だった大陸出身者、宋楚瑜氏が2000年、当時の李登輝総統との葛藤で国民党を離れ、結党した政党である。その主張は私には国民党と変わりがないように思えるが、この党首の人柄によるのか、国民党支持者にも人気がある。今回の総統選では、国民党支持者の中の批判者票を獲得し、立法院比例区で3議席を久しぶりに獲得した。ただ、宋楚瑜氏の個人的な人気に頼った政党であり、その主張も実に曖昧模糊で、彼が政界を去れば衰退あるいは解党する可能性が極めて強いと私は判断している。
比較的長い活動歴のある左派政党、綠党と、新生した社会民主党の二つが今回の選挙で連盟を組んだ。一時、時代力量代表の黄氏も社会運動で行動を共にしていた時期もあり、2015年に新生した社会民主党にはひまわり学生運動参加者内の左派系学生も参加している。その主張は時代力量よりも福祉・社会配分が明確で、社会主義色が強い。大きな勢力にはならないだろうが、社会運動、環境運動では一定の力を持ち続けるだろう。